八塩折(やしおり)の酒とは

 712年に『古事記』、720年に『日本書紀』が中央政府によって編纂されています。
その『古事記』の上巻、『日本書紀』の神代巻の半分までが出雲とその周辺を舞台
にした出雲神話で占められています。
その中に八岐大蛇(やまたのおろち)という大蛇退治の話がでてきます。
須佐之男命(すさのおのみこと)が出雲国で八塩折(やしおり)の酒を造り、大蛇を
酔わせて退治しました。
大蛇の尾からでてきた都牟刈(つむがり)の太刀は『天叢雲の剣』(あめのむらくものつるぎ)
として皇位継承の三種の神器の一つになっています。

 この大蛇を酔わせた八塩折の酒とは、いったん熟成した醪を搾って濾別した酒で
さらに仕込むという作業を繰り返した酒で、非常に高度な技術を要します。

この再現酒について

 記紀には実際の作り方まで書いてありませんが、平安時代の文献には、実際に酒で
仕込んだ酒の大まかな作り方が書いてあります。
 ところが、この方法をそのまま真似ても、お酒にならなかった。(醗酵がすすまなかった)
という実例が報告されております。

 このため、「八塩折」は架空の酒ではないかという説もございます。
 ところが、水の代わりに酒で仕込む方法は、「貴醸酒」の名で20数年前に
国税庁醸造試験場で技術開発されております。今回は、その技術を応用し、おそらく
こうではなかったかと思われる仕込を再現したものです。

 昔の仕込配合で醸したお酒を用いて、更に又、お酒を仕込むということを繰り返して
醸造しております。

 特殊な仕込のために、昼夜、気を許せない手入れを重ね、
しぼっては仕込み、しぼっては仕込み、ようやく造り上げましたが、
仕込に使うお米やお酒の割合に対して、出来上がるお酒の量が大変少なく、
極めて希少なものとなりました。